出張二日目の晩は三年ぶりに大学の恩師根本先生(41話に登場)に連絡をして、新宿で飲むことにしていました。
一件目のお店は“ハンフリー・ハングリー”。雰囲気のあるカウンターには俳優のハンフリー・ボガードの写真が飾られています。
最初にいただいたのはブルスケッタ。フランスパンの上に薄切りのトマトをのせて焼いている風味と酸味が抜群の一品は私好みで、ビールとの相性も抜群でした。
ビールが止まらなくなるブランケッタがなくなる頃に運ばれたのがミートボールカレー風味。お子様向けの味を連想してしまいますが、食べてみるとコクがあって甘さ控えめな大人の味でした。カレーはもともと日本に入ってきた当初は軍隊の食べ物で、その後一般に広まってからも当分は大人の食べ物でした。濃厚ソースと肉団子が口の中で絶妙に絡み合いビールにも合います。食いしんぼの私は残ったソースをパンに付けてきれいに平らげました。私は店主の目が行き届くサイズのお店でこのような手作りの料理が食べられるというのが大好きです。
二品目を食べ終わると根本先生は「おい、行くぞ!」と、山口県のお土産で持って行った獺祭(だっさい)“二割三分”を片手にマスターと私を連れて“十月(じゅうがつ)”という素敵なママさんのお店に移動しました。
こちらのお店では月に一度全国の銘酒を楽しむ会をしているということでしたが、獺祭はまだ飲んだことがないそうで、私も柳井から持って行った甲斐がありました。
「米の香りがしっかりしているなぁ〜」
とお酒飲みのプロフェッショナル達はそんなことを言いながらすいすいと四合瓶を空にしてしまいましたが、それよりも私は、さりげなく目の前に置かれた付き出しのトマトと日本酒の相性が良いのに感心していました。
「このトマトうまいですねぇ〜」
「よかった。これ栃木産なのよ!」
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| 左からマスター 私 根本先生 |
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栃木産のおいしいトマト |
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左がママさん |
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楽しく、そして安く飲める新宿ゴールデン街のお店には、お客さんを包み込む温かい空気と店主のさりげないこだわりがあって、私は「ぜひまた来たい!」と思いました。
この後2軒はしごして、根本先生と11時に別れました。
二十年前、獨協大学のクラス担任と生徒という立場で知り合い、その後私が草野球の助っ人として根本先生の所属する金輪際(こんりんざい)という野球チームに参加させていただき、試合後はいつもお腹いっぱいの食事とお酒をごちそうになっていました。
先生と一緒にお酒を飲む時の私は零細ホテルの社長ではなく、今も大学生のまんま。私が生意気なことを言うと、
「ばかやろ〜!」
と頭を叩かれる。恩師はいつまでも恩師。昔と変わらない関係でお酒が飲めるって本当に幸せなことですよね。 |