大晦日。私は大掃除でホテルの玄関の窓ふきをしていた。
掃除は苦手だし好きでもないが、12月30日に玄関の窓ふきとマイクロバスの洗車と自分の事務所の掃除だけは、毎年息子と二人でやっている。
しかし、今年はありがたいことに12月30日もたくさんのお客様にご利用いただき忙しかったので、その日は息子と一緒にマイクロバスの洗車しかできなかった。
仕方なく、翌日の大晦日に一人寂しく玄関の窓ふきをしていると、朝食のおばちゃん(スタッフ)が手伝いに来てくれた。私の掃除が下手だから心配だったのだろう。
そうしていると、今度は料理長が、「社長、そんなやり方じゃダメだよぉ!」と言って手伝いに来てくれた。
いつの間にか、おばちゃん二人と料理長が脚立と窓用洗剤を使ってすごい勢いで窓を磨いていた。
あんまりピカピカに磨くので私は、「そんなにきれいにしたら鳥が窓にぶつかっちゃうよ〜」と笑って言った。
・・・元旦の朝。
「社長大変!自動ドアの向こうで鳥が死んでいる〜」
と女性スタッフが叫んだ。
『恐れていた事態が起きてしまったか!』
と思いながら、現場を確認すると幸いにも鳥はまだ息をしていた。
しかし、早くもカラスと猫がこの弱った鳥を食べてやろうと遠くから狙っていたので、私はタオルにくるんで、高い位置にあるロビー周りの庭の木陰に移した。
それでも鳥は相変わらず何とか息をしているという状況で、一向に飛び立つ様子はない。私と女性スタッフはこれが一時的な脳震盪であることを祈った。
15分後、私たちは様子を見に行った。すると、ぐったりしていた鳥が突然バタバタっと元気よく飛んで行った。
・・・今年のお正月は、3日が日曜日ということもあってか、宿泊客が少なかったのに、2日の午後から突然多くの宿泊予約の電話がかかってきた。
『鳥の恩返し?まさか!!!』
そういえば1月2日の夜、予約もなしに「泊まりたい!」
と来られたコートを羽織ったご年配の男性は、自分の名前が書けないほど酔払っていたので、私がお部屋までお連れしたが、何度も何度も私に「ありがとう」と言っていた。
今思えば、その動作は鳥が直立してお辞儀をしている姿のようだった。 |